3Dスキャンとは
3Dスキャン技術が活躍する場所
近年、様々な業界で3Dスキャン技術を活用して商品開発や業務が行われるようになりました。地形、建造物、工業製品や設備・文化財・医療、部品や小物など、あらゆる規模で業種や分野に適した3Dスキャン技術が使われています。
例えば、工業分野では3DCADを使用した設計が主流となり、より複雑で高度な製品の開発が可能となりました。しかしその反面、従来の接触式の計測方法では複雑すぎて図ることができない状況が多く生まれています。
そんな時に活躍するのが3Dスキャン技術です。
大きなものから小さなものまで3Dデータ化!
広範囲 | 中範囲 | 小範囲 |
---|---|---|
地形 | 建造物 | 工業製品 文化財 医療器具 |
複数枚の航空写真を合成 | 測量用エリア スキャナを使用 | 固定式スキャナを使用 |
どんな技術か?
3Dスキャン技術とは、現実の立体物の形状を計測する装置(3Dスキャナ)で、立体物を3Dデータに変換するための仕組みです。物体に触れる事なく形状を取得できるので、ゴムの様な触ると変形してしまう物も正確に計測が可能です。 地形や建物、車や文化財等様々な物を形にすることでパソコンソフトウエア上でくるくる回したり拡大縮小表示をしたり、寸法を測る事ができます。3Dデータ同士を重ねて大きさの比較をしたり、ダイエット前後の差を調べたり実物ではできない事が3Dスキャンを行うと可能となります。「現物を正確に3Dデータとして取得でき、データ同士をいくつも重ねる事ができる」これが3Dスキャン技術です。
物体をデータ化する装置『3Dスキャナ』
3Dスキャナとは?
3DスキャナとはレーザーやLED等の光を対象物に投影し反射する時間差や照射の角度をカメラで捉え計算し、物体表面の凹凸形状を3次元データとして取得する装置です。
少し前までは接触式測定機にて多点プロービングを行い座標情報の取得、3Dデータ化を行っていましたが、近年はこれに代わり3Dスキャナを用いて非接触で計測を行うようになりました。
重量・サイズ・材質等による制限が少なく短時間で複雑な形状を3Dデータ化できる特徴があります。
スマートフォンの顔認証機能や自動運転のライダーセンサーも身近な3Dスキャナです。
3Dスキャナの種類
航空写真測量
写真合成技術を使い複数の航空写真から地形や建物の3次元データを作成する技術です。
活用例
最近ではドローンに搭載したカメラから地上に向けて100枚以上の空撮写真を撮影し、災害現場の3次元データや地形の変化を調べるために使われています。
エリアスキャナ、レーザースキャナ
地形や建物の測量で使用されるスキャナで、地上に三脚等で設置して百メートル先まで3Dデータ化する装置です。
活用例
採掘現場の土砂残量体積や、工場や施設の配管設備やレイアウト検討の為に使用されます。
固定式スキャナ
製造業で頻繁に使用される装置です。
活用例
対象物として航空機や大型重機から自動車・家電製品・玩具・文化財まで幅広い分野で使用されています。
固定式スキャナは更に細かい5つの種類に分けられます。
門型
接触式3次元測定機(CMM)の先端にレーザー式スキャナを取り付けたタイプです。接触測定と3Dスキャンを同じ設置状態で行う事ができるので幾何形状検査と外観形状検査が1回のセッティングで行えます。測定ワークの定盤面側は計測が行えないので、計測目的を明確にし、設置方法を考えなければえなければいけません。
アーム式
多関節アームの先端にレーザースキャナを取り付けて3D形状を計測できる装置です。比較的小型で可搬性に優れているので、作業現場に持ち込み計測を行う事も可能です。アーム関節のエンコーダにより先端スキャナの座標を把握して計測を行うのでポイントシール貼付が不要です。アーム長さを超える測定物はアーム設置位置を変える為、スキャンクオリティが低下するおそれがあります。レーザー光源の為、光沢物に強くパウダーレスで計測が可能です。
カメラ式
縞模様やレーザーを測定対象物に投影し、内蔵カメラで撮影して形状を計測する装置です。光源・ワーク・カメラの3点で三角測量を行い深さZ方向、CCDカメラよりXY方向を算出し物体表面の広い範囲を一度に形状取得できる装置です。プロジェクタとカメラのレンズを変更する事で狭い範囲を高密度で3Dスキャンする事も可能な装置のため、形状再現性が高いです。しかし対象物の表面が高光沢の場合は3Dスキャンする事が出来ない為、パウダー塗布が必要となります。影になる部分は測定が出来ない為、カメラアングルやワーク位置を変更して計測します。ワーク上にポイントシールを張り付ける事で座標系をワークに持たせ複数のスキャンデータの合成が行えます。三脚やスタンドが必要な為設置場所に制約がかかる事があります。シングルカメラタイプとステレオカメラタイプがあります。
X線CT
装置の中に測定ワークを設置し360度回転させ、X線を物体内部に透過、減衰エネルギー値を計算することでワーク形状を計測する装置です。見えない内部の構造をスキャンする唯一の方法になります。質量の大きく異なる素材(鉄とプラスチック)の組み合わせ部品は比重の高い物体形状のみ3Dデータ化が可能です。また、厚みのある金属はX線を透過出来ない為3Dデータ化する事ができません。コネクタ内部の組み付け状況やアルミ鋳造製品の鋳巣検査、容器キャップ部分のシール検査等に効果を発揮します。
ハンディ型
手に持って自由に動かしながら3Dスキャンする事ができる装置です。
小型で軽量なので、可搬性の高さを生かして狭い空間に持ち込んで、様々な角度からスキャンができます。
比較的小さな範囲の計測に向いている装置です。
どんなデータができる?
スキャナで計測したデータ
3Dスキャナで計測した3Dデータは使用するソフトによっても変わりますが、概ね点群もしくはポリゴンデータとなります。
3Dスキャナはワーク形状を細かな点座標情報で精細に測定する装置であり、3DCADのような円柱や平面等のプリミティブやNurbs曲面として初めから取得することはできません。
3Dスキャナの特性と選ぶポイント
スキャナによって不得意なもの
計測方式によっては金属加工面の様な光沢面、黒色、繊維状の表面、ガラス等の透明な製品の計測が出来ない機種や不得意な機種があります。
対象ワークの色味が激しく違う物(白と黒などの対比色でカラーリングされている物)の場合、どちらか一方が計測できない機種もありますので実機によるサンプル計測を行って見極めが大切です。
パウダーを表面にスプレーすることで計測できるようになりますので、スプレーが可能な対象物の場合はあまり気にすることはありません。
機種によって不得意なものの例
・光沢があるもの(金属加工製品、例2、例3)
・透明なもの(ガラスのコップ、例2、例3)
・色のコントラストが激しいもの(例1、例2、例3)
など
目的に合わせてスキャナを選ぶ
各スキャナには特性があるので、目的に応じて適切な種類を選ぶことが大切です。
ここではスキャナを選ぶ時に確認しておきたいポイントをご紹介します。
形状重視か、色調重視か
ハンディ型スキャナは高精度に対象ワークの表面形状の取得に重点を置いて開発された機種と、形状取得はまあまあに物体表面のカラーテクスチャーを取得に重点を置いて開発された機種と存在します。
文化財等のデジタルアーカイブやエンターテイメント向けの計測はカラーテクスチャー機能が高い機種が向いています。
スキャンスピード
機種選定の際の重要な要素の一つがスキャンスピードです。そのまま作業効率に直結します。
計測方式の違いにより時間当たりの計測できる面積が変わってきます。
一般的にランダムパターン投影方式の方が全体をスキャンするスピードは速い傾向があります。
出力データ形式
スキャンデータを処理するソフトの種類によってはSTLではなく点群のみというソフトがあります。
後工程を考えるとSTL形式でデータを出力できるソフトを使用しているスキャナがよいでしょう。
電源方式
スキャナを稼働させるための電源がAC電源のみの機種、内蔵or外部バッテリー併用式の機種がありますので、実際の使用環境や測定状況に合わせて選定する事をお勧めします。
バッテリー式のメリットは、ノートパソコン内蔵バッテリーと併用して電源の無い環境でも計測するできることです。
予備のバッテリーを準備すればより長い時間計測も可能になるので、屋外や遺跡内部で計測に効果を発揮します。
ステレオカメラ方式とレーザー方式との違い
ATOS(ステレオカメラ)
- 色
黒色、赤色系、透明、光沢面はパウダー塗布が必要 - 装置
スタンドへ固定して計測を行う。
精度の高い計測を行うにはマーカー貼り付けが必須。
表面形状の再現性が高いので細かいディテールや、完全な立体形状の取得に効力を発揮。
被写界深度を生かし入り組んだ形状も奥まで形状取得が可能。
Leica+T-Scan(レーザー方式)
- 色
すべての色、表面状態に対応可能(透明を除く) - 装置
ハンディスキャナを持ち運べるので、レーザーで追尾できる範囲は移動可能。マーカーレス。
機動力を生かし、大きな製品や座標情報取得等に効力を発揮。
被写界深度が浅いので極端に入り組んだ形状は不得意。
共通点:可搬式なので、どこの現場でも持ち込むことが可能。
お客様の現場で高精度な3Dスキャン・リバースエンジニアリングサービスをご提供いたします。